金属製RFIDカードには、動作周波数に合わせた構造設計が必要です。LFやHF/NFCの設計では、金属面が磁界に与える影響を抑えるフェライト層やシールド層の背後に、チップとコイルアンテナを配置するのが一般的です。フェライトは、透磁率と電気抵抗が高い、酸化鉄を基にしたセラミック材料です。適切なシールドや、別の設計によるアンテナ構成がないと、渦電流によってアンテナの同調がずれ、読み取りが大幅に低下したり、できなくなったりします。UHFカードは、異なる無線構成を使います。LF/HFのフェライトとコイルを積層した構造が、すべての金属製RFIDカードに当てはまるわけではありません。
近くの金属が読み取りに影響する理由
LFとHF/NFCのRFID読取機は、磁気結合で動作します。読取機が交流磁界を発生させ、カードのコイルアンテナがそこからエネルギーを取り込み、チップが応答します。コイルの前に導電性の金属板を置くと、磁界によって金属自体に循環する電流が生じます。この渦電流は逆向きの磁界を作り、アンテナに届く磁界の大部分を打ち消すとともに、アンテナの共振周波数を、読取機が受信する周波数からずらします。どちらの作用も、利用できるエネルギーを減らし、読み取りを妨げる可能性があります。
普通のNFCステッカーをノートパソコンのふたや機械の筐体に貼ると使えなくなるのも、同じ物理現象によるものです。業界では、標準のインレイの背面に薄いフェライトシートを接着した、金属対応タグで対処しています。多くのHF/NFC金属製カードも、後から付け加えるのではなく、カード本体の設計に同じ原理を組み込んでいます。決済カード型の金属製カードでは、さらに、金属を貫くスリットや開口部によって渦電流のループを切り、磁界が通るようにする工夫を加えています。
機能する金属製カードの内部構造
表面の素材だけでなく、完成した積層構造が重要です。以下は、LF/HFのコイルを使う設計で典型的な層構成です。UHFの設計には、独自のアンテナと取り付け構成が必要です。
アンテナコイルとチップは、むき出しの金属の背後ではなく、表裏面の間に配置します。このコイル式の構造では、表面とコイルの間のシールドが、非接触の読み取り機能を保つのに役立ちます。
| 層 | 役割 | 一般的な仕様 |
|---|---|---|
| 表面 | 外観と表示加工を施す面 | 304系ステンレス、真鍮、銅、または数ミクロン厚のPVDコーティングを施した鋼 |
| フェライト/シールド層 | 導電性の表面から磁界をそらす | 厚さは一ミリメートル未満で、カードの輪郭に型抜き |
| アンテナとチップ | RFID機能そのもの | 汎用カードではなく、最終的な積層構造に同調させたコイル |
| 芯材またはスペーサー | 平坦さを保ち、仕上がりの厚さを決める | 仕上がり厚を決める。表面板の厚さではなく、全体の構成を確認 |
| 裏面 | 印刷、QRコード欄、シリアル番号、法的表示 | 構成により、金属または印刷可能な層 |
アンテナは完成した積層構造に合わせて同調させるため、工程の最後に厚さを自由に選ぶことはできません。芯材を変えると、同調も変わります。そのため、金属製カードは素材単体ではなく、構成として見積もります。仕様を書く前に、金属製カード内部のRF層について、ページごとの詳しい解説を読む価値があるのも、このためです。
周波数とチップの選択
金属製であっても、通常の選択肢はなくなりません。ただし、それぞれに必要な設計の程度が変わります。
| 周波数 | 規格 | 一般的な用途 | 金属による変化 |
|---|---|---|---|
| 125 kHz(LF) | 独自の無線インターフェース | 旧来の入退室管理、書き換え可能な認証媒体 | 元々読取距離が短いため、シールドを施した構造で失える余裕が少ない |
| 13.56 MHz(HF/NFC) | ISO/IEC 14443A、ISO/IEC 15693 | スマートフォンにかざす用途、入退室用認証媒体、会員証、AES-128暗号化構造 | 金属製カードで最も一般的な方式で、実績のある構造が最も多い |
| 860–960 MHz(UHF) | ISO/IEC 18000-63(EPC Gen2) | 資産の追跡、より遠距離での識別 | アンテナの形状と取り付けが性能を大きく左右するため、配置試験が必須 |
周波数にかかわらず、変わらない手順があります。ロット製造の前に、データを書き込んだサンプルを、実際に使用するスマートフォン、読取機、電子錠そのもので読み取ることです。卓上USB読取機で完全に読み取れる金属製カードでも、アンテナや金属製背面板が異なる壁付け読取機では、読み取れない場合があります。
日常の使用で金属製カードが変えるもの
- 読取距離が短くなる場合があります。 読取距離は、完成したアンテナ、シールド、読取機、向きによって決まり、PVCより短くなることがあります。接触する位置でかざす読取機なら気づかれませんが、4 cm離してかざす読取機では、先に試験してください。
- 割れる代わりに曲がります。 PVCは目に見える亀裂が生じることがあります。金属は、使えそうな外観でも、曲がったままになる場合があります。返却時の点検には、平坦さと読取性能を含めてください。
- プリンターとの適合性を確認します。 標準的な卓上熱転写カードプリンターやエンボス機に対応すると決めつけないでください。一般的には工場で表示加工を施します。施設内での加工には、特定の構成と機器に対する承認が必要です。
- 重さは魅力であると同時に、驚きにもなります。 0.76 mmのPVCカードとの差は、手に取ると明らかです。構成によって変わるため、表の数値ではなく、実物サンプルで判断してください。
- 傷は損傷というより、使い込んだ印象になります。 ヘアラインやマットの表面は使用の跡を目立ちにくくし、鏡面ではロビーの照明の下で、すべての指紋が見えます。
金属が適する用途、適さない用途
当社は、木材、植物由来ボード、再生PVCを使ったホテルカードキーの導入を手がけているため、よく聞かれるのは率直な質問です。ホテル全体を金属製に切り替えるべきでしょうか。ほとんどの場合、答えはいいえです。客室の鍵は、大量に運用する備品で、何千回も扱われ、ゲストのポケットに入って施設の外に持ち出され、フロントで客室番号を印字する必要もよくあります。金属は、その三点すべてに適さず、一枚当たりの費用にも大きな差があります。
ヘアラインステンレスは、金属製RFIDの基本となる構成です。鋼の表面に導電性があるからこそ、その背後の構造が重要になります。
金属が価値を発揮するのは、発行枚数が少なく、意図を込めて作るカードです。一泊ごとのゲストではなく、レジデンスやヴィラの所有者向け。何年も財布に入るクラブ、スパ、レストランの会員証。手渡す際の演出に重さが関わる招待カードやギフトカード。総支配人自身のNFC名刺などです。こうした運用では、カードは長く使うブランド資産となり、追加費用は運営予算ではなく、マーケティング予算の一部になります。
大量に発行するカードでは、素材の選択肢は木材、バイオ由来ボード、再生PVCです。木製・BioBoard・再生PVCのホテルカードキー比較で紹介しています。素材ではなく技術の選定段階にある場合は、RFIDカードとはとホテルカードキーのガイドで、まず周波数と電子錠に関する疑問を確認してください。
表示加工と仕上げの選択
真鍮へのレーザー彫刻は、プラスチックカードへの印刷ではつぶれるような細い線も保ちます。
金属への表示加工は、カードへの印刷とはまったく異なります。選ぶ仕上げによって、適した表示方法が決まります。
- 黒いコーティング面は、最も高いコントラストが得られます。 レーザーでPVDやコーティングを取り除き、明るい鋼の面を露出させるため、彫り込みではなく色の変化で表示します。小さな文字や模様も鮮明です。
- 真鍮には深さを付けられます。 コーティングした鋼ではなく、銅と亜鉛の合金そのもので、加工工具に対して柔らかいためです。深い彫刻やエナメル調の色入れは、薄いめっきには適さなくても、真鍮では可能です。
- 銅の表面は変化します。 未処理では、時間とともに暗くなり、古色を帯びます。透明コーティングで色調を保つか、経年変化を楽しむかを、サンプル段階で決めてください。
- 暗い表面では、データ用に明るい欄が必要です。 グレー地にグレーのQRコードやシリアル番号では、読取試験に合格できません。背後に印刷した欄を設けることで対処できます。
- フルカラーはUV印刷で、通常は白インクの上に印刷します。 金属には白がないため、明るい色のデザインには、先に下地層を設ける必要があります。
注文前の確認事項
- 汎用の試験用読取機ではなく、実際の読取機や電子錠で読み取ったデータ書き込み済みサンプル
- 穴、スリット、貫通する切り抜きを示し、型を作る前にアンテナの経路と照合した抜き型図
- 収める必要がある読取機の差し込み口やディスペンサーに対する、仕上がり厚の確認
- データ書き込みの担当:工場でデータとシリアル番号を書き込むか、自社システム用に無地で納品するか
- 縁と角の仕上げ:金属では、単なる裁断の細部ではなく、目に見えるデザイン上の選択です
よくあるご質問
金属製カードはRFIDを遮断しますか。
通常のLF/HFコイルアンテナの近くに導電性の金属があると、同調がずれ、読み取りを妨げる可能性があります。完成した金属製RFIDカードでは、周波数ごとのシールド、アンテナ形状、その他の設計で対処します。UHFには、異なるアンテナ構成が必要です。動作の証拠となるのは、量産前に、使用予定の読取機で試験したデータ書き込み済みサンプルです。
金属製カードは、当ホテルの電子錠で使えますか。
チップ、プロトコル、データ書き込み方式、構造が13.56 MHzの電子錠に適合すれば、使える可能性があります。読取距離はプラスチックカードより短くなる場合があり、電子錠の読取機は、アンテナ設計や取り付け条件が異なります。ロットを注文する前に、データを書き込んだ一枚のカードを、使用する正確な電子錠モデルと、フロントの書き込み機器で試験してください。関連記事:ホテルカードキーが使えなくなる理由。
金属製カードにフルカラー印刷はできますか。
はい。UV印刷で対応でき、通常は白い下地層の上に印刷して、下の金属の色に引きずられないようにします。一枚のカードに、レーザー加工と印刷を組み合わせることもよくあります。ロゴを彫刻し、データ用の欄を印刷するなどです。
金属製RFIDカードの厚さはどのくらいですか。
目安は0.3〜0.8 mmですが、標準CR80の輪郭85.60 × 53.98 mmに対し、完成したRFIDカードの厚さは、正確な構成ごとに確認する必要があります。標準PVCカードは0.76 mmなので、金属製の構造は、既存の読取機が受け入れるカードより薄くなることも、少し厚くなることもあります。これは推測せず、確認すべき仕様です。
プロジェクトに金属製の構造が適している場合は、金属製RFIDカードについて、仕上げごとの資料と、デザイン・彫刻の仕様をこちらで確認できます。ホテル全体の客室カードキーを検討している場合は、木製、BioBoard、再生PVCのサンプルセットをご依頼ください。三種類をフロントチームに手に取ってもらい、比べてみてください。